Peshawar(ペシャーワル1日日)
         〜
異国の只ならぬ熱気に目まいを起こす日

今日はペシャーワルの街散策の日だ。

朝起きて、相変わらず一人ぼっちの部屋で支度をしていると、
後輩の一人が私の部屋を訪ねてきた。

彼女は3人で一室に泊まっていたのだが、
昨日の晩から、あとの2人が完全にダウンしてしまったのである。
腹痛がひどく、2人とも夜中じゅうずっとトイレに行ったりきたりしていたそうだ。

心配になったので、訪ねてきた後輩とともに、
彼女の泊まっている部屋へと向かった。

2人ともぐったりしていて、日本にいるときのようなはつらつとした様子は微塵もなかった。
私は、また下痢止めの薬と抗生剤などを渡しておいた。

そんなわけで、今日は初の欠席者が出没。
上記の2人以外にも、お腹を壊して倒れている人がいた。


とりあえず、気を取り直して朝食を済ませ、ホテルを出発した。

今日の一発目は、ペシャーワル博物館。

そもそも、ペシャーワルという街の名は、「国境の街」という意味をもっている。
その名のとおり、現在アフガニスタンと国境を接しており、
南アジアというよりも、中央アジア・アラブ的な雰囲気のある街だ。
そんな現在のペシャーワルの街も、かつてはプルシャプラといい、ガンダーラ美術の盛んな都市だった。
古代インドでも隆盛を極め、2世紀にはカニシカ王がクシャーナ朝の首都に定めた。

そして、ガンダーラ美術というのは、古代インドの仏教美術のことで、
インドの伝統美術にヘレニズム文化(古代ギリシア文化)がミックスされている。
平たく言うと、仏像にちょっと西洋スタイルが取り入れられた美術、ということでしょうか。
かつてのプルシャプラは、異文化が互いに行き交う融合地点だったのだ。

そういや、パキスタンと仏教文化って、何となく結びつかないけど、
ガンダーラ地方は今のパキスタンにあるんだよね。
今やパキスタンはイスラム教国家になってしまったけれど、
そういえば、インド文明発祥の地であるインダス川やハラッパー、モヘンジョ=ダロもパキスタンだし、
パキスタンは様々な歴史と文化の交じり合う、魅惑的で不思議な国です。

さて、ペシャワール博物館に話を戻しましょう。
ガンダーラ美術で有名なペシャーワル。さすがに仏像だらけです。
中には、「え、これブッダ??」みたいなのもありました。

なかなかリアル 画像が汚くてすみません

日本の美術館なんかで「ガンダーラ美術展覧会」みたいなのがあるときも、
たいがい「ペシャーワル博物館 蔵」っていう展示物がある。
それだけたくさんの仏教美術品が、このガンダーラ地方から出土したということですね。


そして、こんなところにも日本人に遭遇!
純粋に観光でここに来ているらしい。モノ好きというか何というか(←超失礼。)
なかなかこんな偏狭の地に、観光で来る人はいないんじゃないか、と思ってしまうのだけど、
そんなところで同胞人に出会えるのは、手放しで嬉しいものです。

そしてそして、ここペシャーワル博物館の館長さんが、
今回同行してくださっているY先生のお知り合いだという。
先日訪れた、オリエンタルカレッジ時代の同級生だとのこと。
いやぁ、世間は狭いですな!

そんなよしみで、事務所にお邪魔させていただき、何とお茶までいただきました。
Kahwa(カフワ)という、北西辺境州ではポピュラーなお茶です。
コーヒーの語源にもなったというこのカフワは、日本人には馴染みのないお茶だが、
わかりやすく言うと、緑茶にお砂糖を入れたような感じ。
好みが分かれるところだけど、なかなかウマイですっ。


ペシャーワル博物館を後にし、ペシャーワル旧市街へと繰り出した。
昨日にも書いたように、ひげもじゃの男の人だらけ。かなり喧騒感あふれる街である。
そんな、降りるには最も相応しくなさそうな場所で、バスは停まった。

うわぁ、こんなところで降りるのかぁ。。
バスから降りると、すでにもう、注目の的・的・的。
これは、女一人どころか、男でも外人面してたら、一人で歩くのには勇気がいるかも。

見〜ら〜れ〜て〜るぅ〜

ラホールでもいろんな人がこちらを見ていたけど、こんなもん、ラホールの比じゃない。
とりあえず、私たちの周りの全ての人が、こっちを物珍しそうに見ている、という状態。
こりゃあ、まるで見世物状態・芸能人状態だ。
私たち集団を見るためだけに、人が群がり、道がふさがって渋滞が起きる。
おもしろくもあり、ちょっと鬱陶しくもあった。

でも、ペシャーワルの人々は、私たちに対して敵意があるわけではないらしく(あったら困る)、
むしろ、とっても興味深げな感じでこちらを見ているのだった。
カメラを向けると、みんな笑顔で応えてくれる。思わずこっちまで笑顔に☆

デジカメで撮った画像を見せると大喜び♪ 「もうかりまっか〜」「ぼちぼちでんなぁ」
日差しに耐えるロバ。たくましい☆ えせミッキーも笑顔でお出迎え(笑)

行く先々では、お店の人からの大歓迎と、周囲からの多大なる好奇の視線を存分に受けました。

あるお店では、摩訶不思議アイスクリームを食べ、
またあるお店では、本日2回目のカフワをいただき、
そしてまたあるお店では、折紙で鶴を折ってあげ、みんなにプレゼントしたりして(取り合いになってました)。

ミントっぽい?? 何とも言えないお味でした
飲むと気持ちが落ち着きます


ペシャーワルの旧市街は、道がとても狭く、そんじょそこらの路地裏なんかより何十倍も怪しい。
しかも、どこに通じているのかもわからないくらい、複雑に入り組んだ構造になっている。
こんなところでいったん迷ってしまったら、もうおしまいだ。
そんな窮屈な街の至るところに、たくさんの店が立ち並んでいた。

金ぴか☆金物屋さん カラフル布屋さん
所狭しと香辛料屋さん 新聞読みながら靴屋さん

アクセサリー、帽子、靴、お茶の葉っぱ、香辛料、金・銀の食器、小物入れ、布地、アフガンストール、絨毯…
本当に数え切れないほどに、いろいろな種類のお店が連なっている。
ここペシャーワルにしかないようなものも、たくさん売っていた。


ペシャーワルに欠かせないものといえば、そう、女性のブルカ。
外を出歩く女性こそ珍しい存在であるが、そんなごく少数の女性が必ず身に着けているのはブルカである。

ブルカというのは、北西辺境州やアフガニスタンの女性がかぶっている、おばけみたいなヴェールのこと。
ムスリム女性が人前で顔を覆い隠すためにかぶるものである。
頭から足の先まですっぽりと覆い隠された、あの神秘的な姿に私は惹かれてしまった。

そんな憧れのブルカ、とうとう入手してしまいました!
ブルカは、パキスタンでもペシャーワルくらいでしか買うことができないらしいと聞き、
これは買わねば!! と意気も揚々に、魅惑のブルカを私は手にしたのであった。

ブルカといえば、タリバン政権下のアフガニスタンで、女性がブルカを強制的にかぶせられていた、
というのをニュースで見たことがある方も多いと思うが、まさにそのブルカである。
「アフガン零年」「午後の五時」などなど、最近ちょくちょく出てくるアフガン映画でも当然見ることができる。
私はこの映画まだ観てないので、早く観たいのだけど…

「午後の五時」

さて、実際にブルカを体験してみた。

Qちゃん状態


 ←こんな感じのモノである。
 なにぶん、ブルカモデルがいなくて、
 部屋の壁に引っ掛けただけの状態では
 ちょっとわかりにくいかと思いますが、お許しを。


 人前に出るとき、女性は必ずコレをかぶる。
 家の中で、女性同士だと、ブルカの前の部分を
 頭の後ろまで捲し上げて顔を出したりする。





見えなそうで一応見える
 つくりは立体構造になっており、
 頭部分がちゃんと丸く作られている。
 パシュトゥーンの女の人は頭が小さいのかなぁ。
 私がかぶっても、頭部分がフィットしてくれない。

 メッシュ部分に目の位置を合わせて、何とかかぶってみた。
 こ、これは…かなりつらい。視界が半分程度になる。
 こんなんで動き回るのは、ちょっとしんどいな。
 しかも、この下に長袖のシャルワールカミーズを着るのだから、
 夏なんて、もうこの上なく暑い!!

 これでは外を出歩く気にはなりませんわ…。


美しいです

 でもよく見ると、このブルカ、とってもキレイなのだ。
 布地はすべすべして光沢のある、鮮やかなスカイブルー。
 前のすそ部分は、写真のような感じで刺繍がほどこしてあるし、
 後ろ全体のプリーツも均一でとても美しい。
 もちろん、立体構造の頭部分も、細やかな刺繍が敷き詰められ、
 その作業の丁寧さには、思わずため息が出る。

 ペシャーワルでのブルカは、黒がポピュラーのようだったが、
 ブルーも空のような色ですごくキレイ。



キレイキレイとは言っても、やっぱりあの暑い中かぶっていると、
本当に頭がおかしくなってしまいそうだ。
それに、アフガニスタンのタリバン政権下でのブルカの存在を思うと、
そう軽々しく、ブルカブルカ、と浮かれてもいられない気になる。


そんなこんなで、旧市街の中をうろつき回っているうちに、
何だか頭がのぼせてきて、心なしか足元がおぼつかない感じになってきた。
どうやら、この街の熱気と気候にやられてしまったようだ。

店先で休み休みしながら進んで行ったのだが、それでも身体は疲労を増すばかりだった。
いよいよ立っていられなくなった時、先生がすぐに私の異常に気づき、
買ってもらったお水とコーラに癒されながら、バスへと戻った。

今日のお出かけの予定は、これでおしまい。
あぁ、助かった。。
もっと元気なら、もっといろんなとこを見て回りたいんだけど、今は体調を優先だ。


お水で頭を冷やしたので、少し落ち着きを取り戻した。
ホテルに戻って昼食を食べ、各自部屋で休養をとることに。

…といっても、私はもちろん一人ぼっちの部屋なわけで、
今朝様子を見に行った後輩の部屋へ、再びお見舞いに行った。
一人は相変わらずげっそりした感じで、一日中トイレに行ったり来たりだったらしい。
もう一人は、下痢止めの薬が効いたようで、随分と回復していた。

夕食時に、またホテルのレストランにみんな集まった。
みんなまぁまぁ元気そうだったが、今日ホテルに戻ってきた後の昼食時より明らかに人数が減っていた。
そろそろ疲労もピークに達する頃だ。
正直、私もかなり疲れがたまってきている。

明日は、ガンダーラ遺跡のタフティ・バーイを観に行く予定なのだが、
この調子では、行くかどうかかなり微妙なところである。
今の状態で行くと、間違いなく全員倒れてしまうに違いない、というのは先生の見解。
うーむむむ。。行きたい。。。けどちょっとしんどいかも…。



←8/27へ     Top     8/29へ→