キル・ビル / Kill Bill vol.1 ('03 アメリカ)


<ストーリー>

長い長い昏睡状態から目覚めたひとりの女、ザ・ブライド(ユマ・サーマン)。
彼女は結婚式の最中に、かつて所属していた毒ヘビ暗殺団の襲撃によって、
愛する夫とお腹の子を殺され、自らも頭を撃たれて瀕死の状態に。
奇跡的に回復した彼女に残されたのは、暗殺団とボス“ビル(デヴィッド・キャラダイン)”への復讐心だけ。
暗殺団のメンバーは5人。その名を記したリストを手に、復讐の鬼と化した女の、世界を股にかけた旅が始まる…。


<評価>

★★★★☆(四つ星級)


<かんそー


いやぁー、やってくれたねタラちゃんっ! 私の五感をこれほどまでに刺激してくれるとは。
ホントに、何とまぁヒドイ映画なの(笑)。
観終わった後の、何とも言えない後味の悪さというか嫌悪感というか。
次回に続く、的な終わり方がやらしいね。
間違いなく私のワースト1映画です。ハイ。

いや、しかしそれは、嫌悪感から徐々に「してやられた」という心地よい敗北感に変わっていった。
ワースト1映画=面白くない、というわけではない。おわかり?
私が思うに、「好き」の反対は「嫌い」ではなく、「興味がない」。
例えば、嫌いなTVCMって頭に残るでしょう。あれと同じです。
それはまさに制作者の作戦にまんまとハマってしまってるってわけですな。

『キル・ビル』もまさにそれで、これまでの映画と一風違っているのです。
青葉屋での百人斬りシーンも、秘書さん(ジュリー・ドレフュス)のダルマ姿(笑)も、
オーレン石井(ルーシー・リュー)の頭半分カットシーン(笑)も、
かーなーりの凄惨な殺人にもかかわらず、これまで観た映画の殺し合いとは違う奇妙な残酷さがある。
いやいや、いくらなんでも血ィ噴き出しすぎやし!
しかも、日本育ちのオーレンが片言の日本語だったり、
挿入歌の梶芽衣子といい、服部半蔵(千葉真一)の微妙な英語といい、
いやはや、ここまで来れば、もう笑うよりほかない。

これら全てを本気で大真面目なものと受け止めるか、本気の中に遊び心が加わったものと見るか?

前者だと「こりゃ全くのヒドイ映画だ」なんて感じてしまうだろう。

そういや、この映画の宣伝といったらスゴイものがあった。
黄色のトラックスーツに身を包んだ金髪のユマ・サーマン姉貴が日本刀で切りかかるシーン。
えせ日本人に扮したルーシー・リューが「やっちまいなぁ!」と叫ぶシーン。
そして、スタイリッシュな映像にクールな音楽。
何でも、タランティーノが日本を舞台にして撮った映画らしい。
しかもR-15までついちゃってるってか? どんだけスゴイ映画なんだろう?!

…なんて期待が日本中を包んでいたと思うんです。
ところがフタを開けてみると…

ぉぃぉぃ(--; 何ナンだこれは??
エグすぎ。キモい。殺しすぎ。おもんない。

…なんて失望感が日本中を駆け巡ってしまったと思うんです。

これは完全にギャガさんの宣伝勝ちです。
万人ウケの難しいタランティーノのキワモノ映画を見事に大ヒットさせてしまったのですから。
皆まんまとギャガさんの手中に収まってしまったわけです。
しかし、あの内容ゆえ、完全に好みが二分してしまった。

そこいくと、後者だったら「いやぁ、全く面白いことをやらかしてくれたな」って思うのかもね。

至るところに日本がちりばめられているのも、日本びいきなタランティーノの趣味でしょう。
GO-GO夕張(栗山千明)の名前の由来も、マッハゴーゴーゴーが好きだかららしいし。
それから、タランティーノならではの章立てした話の進め方。時間軸がずれて話が進んでいくのです。
第1章。ヴァニータ・グリーン(ヴィヴィカ・A・フォックス)を殺しに行く時点で、
復讐リストにあるオーレン石井の名前はすでに消されている。
これは、章立てて話が進行していった「パルプ・フィクション」を髣髴とさせますナー。

どちらに感じたのであれ、これが全て計算づくで作られたのだったら、もうまさに「やられた」というしかない。
『キル・ビル vol.1』はワースト1であると同時に、とんでもなく鬼才!!


(記入日 2004・5・10)


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